倒れた奥歯を部分矯正で起こし、むし歯を精密治療した症例|30代男性
治療の概要
| 分野 | 部分矯正・精密むし歯治療・セラミック修復 |
| 場所 | 左下第1大臼歯 |
| 年代・性別 | 30代・男性 |
| 費用 | 約20万円(税別・当時) |
| 治療回数・期間 | 約10回・5ヶ月 |
はじめに
以前から定期的にメンテナンスに通われている30代男性の患者さんです。
ある日の定期健診で、左下の奥歯(第1大臼歯)に入っていた金属の詰め物(インレー)の下で、むし歯が再発していることが分かりました。

ところが、問題がひとつありました。そのすぐ後ろにある歯(第2大臼歯)が、手前に向かって倒れ込むように傾いていたのです。このままでは、むし歯のある歯に器具が届かず、適切な治療ができません。

そこで私は、まず部分矯正で傾いた歯の角度を修正し、治療に必要なスペースを確保してから、むし歯の治療を行う方針をご提案しました。
治療の流れ、使用する矯正装置、期間、費用などをすべてご説明し、ご納得いただけたため、治療を開始しました。
治療ステップ
ステップ1|親知らずの抜歯
まず、傾いた第2大臼歯を後ろから押さえ込んでいた親知らずを抜歯しました。この親知らずがあると、歯を起こすための力がうまく働かないためです。
ステップ2|部分矯正で傾いた歯を起こす
親知らずを抜いた部分が治る過程では、周囲の骨も活発に代謝しています。このタイミングを利用すると、歯がスムーズに動きやすくなります。
今回は「3Dセクショナル」という部分矯正装置を使用しました。この装置は、傾いた歯をピンポイントで起こすことに適しており、サイズも小さいため違和感が少ないのが特徴です。
第1大臼歯に矯正用のバンド(金属の輪)を装着し、型取りを行って装置を作製。約3ヶ月かけて、第2大臼歯を適切な角度まで起こしていきました。

ステップ3|マイクロスコープでむし歯を精密に除去
部分矯正が完了し、治療に必要なスペースが確保できたら、いよいよむし歯の治療です。
まず、お口の中を清潔に保つためのラバーダム(ゴムのシート)を装着します。次に、マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)で患部を拡大観察しながら、古い金属の詰め物と、その下に広がっていたむし歯を丁寧に取り除きました。
肉眼では見えにくい細部まで確認しながら処置を進めることで、むし歯の取り残しを防ぎます。

ステップ4|セラミックインレーで修復
むし歯を除去した部分は、セラミックインレー(白い詰め物)で修復しました。

セラミックは天然の歯に近い色調と透明感があり、見た目が自然です。また、金属の詰め物と比べて歯との適合性が高く、すき間からむし歯が再発するリスクを抑えることができます。
まとめ
治療は5ヶ月ほどかかりましたが、すべてのステップがスムーズに進みました。
一見遠回りに思える部分矯正ですが、傾いた歯をそのままにしてむし歯治療を行うと、器具が届きにくいために治療精度が下がったり、将来的に同じ問題が繰り返されたりする可能性があります。今回のように根本的な原因から改善することで、長期的に安定した状態を目指すことができます。
今後も定期メンテナンスを続けながら、経過を見守ってまいります。
リスク・副作用
部分矯正に関するリスク・副作用
- 装置の装着中、違和感や軽い痛みを感じることがあります
- 歯の移動に伴い、歯根が短くなる(歯根吸収)可能性がまれにあります
- 歯肉が退縮し、歯が長く見えることがあります
- 装置周辺は歯磨きがしにくくなるため、むし歯や歯周病のリスクが高まります
- 矯正後、歯が元の位置に戻ろうとする(後戻り)ことがあります
セラミック治療に関するリスク・副作用
- 強い衝撃や過度な力がかかると、欠けたり割れたりすることがあります
- 治療後、一時的に歯がしみることがあります
- 経年変化により、脱離する可能性があります
- 天然歯を削る必要があります
※治療結果には個人差があります。
京都市中京区 四条烏丸 愛歯科医院 院長 金明善

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