ほうれい線が気になる方へ——歯科医師が「あいうべ体操」を勧める理由
ほうれい線が気になって調べてみると、「表情筋の衰え」が原因の一つだと分かります。では表情筋を鍛えるには?——そこで出てくるのが「あいうべ体操」や「舌回し」です。
これらのエクササイズ、実は私も患者さんにお伝えすることがあります。ただし、美容目的ではありません。唾液の分泌を促し、口呼吸を改善するためです。
なぜ歯科医師が顔のエクササイズを?——順を追ってご説明します。

ほうれい線対策として理にかなっている
まず、ほうれい線についての話から始めましょう。
ほうれい線が深くなる原因はさまざまですが、その一つに口周りの筋肉の衰えがあります。口輪筋(こうりんきん)をはじめとする表情筋が弱まると、頬を支える力が低下し、溝が目立ちやすくなります。
あいうべ体操は「あー」「いー」「うー」「べー」と大きく口を動かすことで、普段あまり使わない口周りの筋肉を刺激します。舌回しも同様に、口の内側から筋肉を動かすトレーニングです。
継続すれば口周りの筋肉が鍛えられ、頬のたるみ予防につながる——この理屈は確かに成り立ちます。
私がこのエクササイズを患者さんにお伝えする理由
では、なぜ歯科医院でこのエクササイズをお伝えするのか。
唾液の分泌を促すためです。
口の中が乾燥すると、さまざまなトラブルが起きやすくなります。舌の表面に汚れ(舌苔)が付きやすくなる、歯周病が悪化しやすくなる、口臭が気になりやすくなる——これらはすべて、唾液不足と関係しています。
唾液には口腔内を洗い流し、細菌の繁殖を抑える働きがあります。唾液が十分に分泌されていれば、口の中は清潔に保たれやすいのです。
あいうべ体操や舌回しは、口周りの筋肉を動かすことで唾液腺を刺激し、唾液の分泌を促します。つまり、顔の筋トレであると同時に、唾液分泌のトレーニングでもあるのです。
口呼吸の改善にも
もう一つ重要なのが、口呼吸の改善です。
口呼吸が習慣になっていると、口の中は常に乾燥した状態になります。乾燥は、先ほど述べたようにさまざまなトラブルの原因になります。
あいうべ体操はもともと、口呼吸を鼻呼吸に変えることを目的として考案されたエクササイズです。口を閉じる力(口唇閉鎖力)を高め、舌を正しい位置(上顎に軽く触れる位置)に保つ習慣をつけることで、自然と鼻呼吸へ移行しやすくなります。
口呼吸が改善されれば、口腔内の乾燥が防がれ、お口の健康を保ちやすくなる。この連鎖が、私がエクササイズを勧める理由です。
やり方
あいうべ体操

- 「あー」と口を大きく開く
- 「いー」と口を横に広げる
- 「うー」と口を前に突き出す
- 「べー」と舌を下に伸ばす
目安:1日30回(10回×3セットでも可)
声は出さなくても構いません。大切なのは、顔全体の筋肉が動いているのを感じるくらい、大きくゆっくり動かすことです。
舌回し

- 口を閉じる
- 歯ぐきと唇の間に舌を入れる
- 歯の表面をなぞるように、ゆっくり円を描く
目安:右回り・左回り各10〜20回
1周に2〜3秒かけるイメージで、ゆっくり大きく回してください。
注意点
効果を急ぐあまり、やりすぎは禁物です。
顎が痛い、だるいと感じたら回数を減らしてください。顎関節に不安がある方は、無理をせず、まずは少ない回数から始めることをお勧めします。
また、口呼吸の原因が慢性的な鼻づまりにある場合は、エクササイズだけでは改善が難しいこともあります。その場合は耳鼻科での診察も検討してください。
まとめ
ほうれい線対策として始めるもよし、お口の乾燥対策として始めるもよし。入口は違っても、やることは同じです。
あいうべ体操と舌回しは、口周りの筋肉を鍛え、唾液分泌を促し、口呼吸を改善する——一石三鳥のエクササイズです。口臭予防にもつながります。
まずは1ヶ月、続けてみてください。
当院では患者さんの状態に応じて、これらのエクササイズをお伝えしています。口の乾燥や口呼吸が気になる方は、お気軽にご相談ください。

