学校歯科検診で「むし歯なし」−安心していい?
6月4日の「虫歯予防デー」を含む一週間は、歯と口の健康週間です。
多くの学校で歯科検診が行われ、お子さんの「むし歯なし」の結果にホッとされたご家庭も多いのではないでしょうか。実は私も休診日を利用して、学校歯科検診にボランティアとして参加しています。今日は現場で感じる学校歯科検診の意義と限界、そしてご家庭でできる対策をお話しします。
学校歯科検診ってどんなもの?
学校保健安全法に基づき、幼稚園から高校までの園児・児童・生徒を対象に毎年行われる口腔の健康診断です。ライトとミラーを使って、むし歯や歯肉炎、かみ合わせ、粘膜の異常などを短時間でチェックし、異常があれば「要受診」のお知らせを配布します。
昔と今で変わった検診の役割
1960年代:むし歯の洪水時代
当時は一人あたり7本以上のむし歯が珍しくありませんでした。学校検診は大量のむし歯を見つけて速やかに治療へつなげる“トリアージ”が主目的でした。
現代:低むし歯時代
フッ素応用や食生活改善の成果で、むし歯は少数ハイリスク児に集中。現在の検診は軽度むし歯のほか、歯肉炎、口呼吸、顎の発育、さらには養育環境にまで目を向ける総合健康評価へ進化しています。
学校歯科検診のメリット
- 早期発見:痛みが出る前に問題を見つけられる
- 予防教育:子どもがセルフケアの大切さを学ぶ
- 健康格差の縮小:受診しにくい家庭の子にも検診機会
- ネグレクト発見:未治療むし歯の放置が続く場合、養育支援が必要かどうか早期に察知
それでも安心できない「検診の限界」
1 X線を使えない
学校では放射線設備を置けないため、隣接面(歯と歯の間)のむし歯や歯根の病変は目視では見逃されやすいのが現実です。
2 時間と環境の制約
1人あたり約1分。照明や姿勢が不十分で、初期むし歯や歯肉の微細な炎症を見落とすことがあります。
3 フォローアップは各家庭任せ
「要受診」の紙をもらっても、忙しさや費用面で受診が遅れるケースがあり、その間にむし歯が進行することも。
プロの歯科医院でできる“ダブルチェック”
- デジタル X 線写真で隠れむし歯を早期発見
- フッ素塗布など、ハイリスク児への個別予防プラン
- 唾液検査でむし歯菌や酸性度を数値化し、原因に合わせたセルフケア指導
- 口腔機能の評価:口呼吸や舌癖、食べる・話す機能をチェック
院長からのメッセージ
学校歯科検診は子どもたちの健康を守る第一歩ですが、万能ではありません。「むし歯なし」と書かれていても100%大丈夫とは限らない ――これが現場に立つ私の実感です。特に永久歯が生え始める6〜12歳は、将来の歯並びと口腔健康を左右する大切な時期。ぜひ学期中や長期休みに歯科医院での精密検査をご検討ください。
愛歯科医院では、学校検診の結果票をお持ちいただければ、デジタル X 線やフッ素塗布、生活習慣アドバイスまでトータルケアをご提案しています。お気軽にご相談ください。
まとめ:学校検診+プロのチェックで“むし歯ゼロ”を目指しましょう!
6月の「歯と口の健康週間」は、ご家族で口腔ケアを見直す絶好のタイミング。学校歯科検診の結果をスタートラインに、プロの視点を取り入れて、一生付き合う大切な歯を守りましょう。
京都市中京区 四条烏丸 愛歯科医院 院長 金明善